蛇塚古墳(へびつかこふん) 住宅街の真ん中で巨大な横穴式石室をさらけ出す古墳

蛇塚古墳
蛇塚古墳

 メモ

【墳形】全長約75mの前方後円墳だったが、早くから墳丘封土が失われ、後円部中央の巨大な横穴式石室だけが露出
【石室】全長17.8m。玄室の長さ6.8m、幅3.9m。玄室の床面積25.8平方m
【築造時期】古墳時代後期末の7世紀頃

【備考】玄室の幅は明日香村の石舞台より大きく、床面積では三重県高倉山、岡山県こうもり山、石舞台古墳に次いで全国第4位。

【所在地】京都市右京区太秦面影町
【アクセス】京福嵐山本線「帷子ノ辻」駅下車、南へ徒歩約10分


住宅街の真ん中にドッカと居座る古墳の遺骸

蛇塚古墳
蛇塚古墳の正面

峨野の首長墓の中で最大とされている蛇塚古墳は、実は分譲住宅の真ん中に位置している。かっては全長75mの前方後円墳だった。早くから墳丘を覆っていた封土が失われ、現在は後円部中央にあった石室だけが露出している。周囲の輪郭をたどると、現在でも前方後円墳だったことが確認できるという。

出した石室内に蛇が棲息し、岩石の間から出入りしていたため、いつからか「蛇塚」という名が付いた。それにしても、住宅街の真ん中で、周囲を鉄柵で囲まれた巨大な石室は、どの角度から見ても異様である。場所によっては、大蛇が裂けた口を大きく開いているようにも見える。



崩落の可能性がある石室

またま市の下請け業者が墓の掃除に来ていたので、許可を貰って石室の内部を見学させて貰った。蒼ケ部の天井石に崩落の可能性があり、鉄の柱を組んで支えてある。そのため、鉄柱の下は人間がやっと滑り込めるほどの高さしかない。蒼ケを抜けて石室に入ると、そこは青天井である。石室を覆っていたはずの天井石はすでに無くなっている。

れだけではない。いつ頃かクスノキが側壁の上に根をはり、最近では根が積み石の間に深く入り込んでいる。清掃員の話だと、早めに伐採して取り払わないと、側壁の石が崩落するおそれがあるとのことだ。民家の方へ転がり落ちるようなことがあれば、大惨事につながることも懸念される。

蛇塚古墳の内部 根を張る樹木
蛇塚古墳の内部 側壁の石に根を張る樹木

被葬者は秦河勝かその関係者?

蛇塚古墳
蛇塚古墳

塚古墳の玄室は、天井石が無くなっているため、高さは不明であるが、長さは実測値で6.8m、幅は3.9mである。また、実測した床面積は25.8平方mである。明日香村にある石舞台古墳の玄室は長さ7.6m、幅3.5m、高さ4.7mである。したがってその床面積は単純計算で26.6平方mとなる。両者を比較すると、蛇塚古墳の玄室の幅は石舞台より若干広い。床面積は石舞台より若干小さく、石舞台についで日本で第4位であるとされている。

室の規模が、被葬者の生前の権力の大きさにそのまま比例しているとは言えない。だが、蛇塚古墳が造られた頃、我が国の中枢部で国政を牛耳っていた人物は、石舞台の被葬者とされる蘇我馬子である。587年に政敵だった物部守屋を滅ぼし、593年にキングメーカとして我が国初の女帝を登極させ、しかも甥の聖徳太子を摂政に据えて、国政を壟断していた。その馬子の向こうを張るように巨大古墳を築くことができたのは、大変な財力の持ち主だったと言える。史書は聖徳太子を陰でバックアップしたスポンサーとして、秦河勝の名を今に伝えている。果たして蛇塚は河勝を葬った墓であろうか。

峨野には、古代豪族の首長墓と目される巨大古墳がもう1基ある。双ケ丘の一の丘の頂上に築かれている円墳・双ケ丘1号墳である。ただし、双ケ丘1号墳の築造時期は蛇塚古墳より若干新しく、7世紀前半とされている。また、玄室の規模も長さ約6.1m、幅3.6m、高さ5m で、蛇塚古墳より幾分小さめだ。古墳の形も、前方後円墳から円墳に変わっている。こうしたことから、親子二代の族長が眠る墓と考えることも可能だ。双ケ丘1号墳の被葬者を秦河勝であると仮定するなら、蛇塚古墳に埋葬されたのはその父親と推定するのは無理だろうか。ただし、史書はその人物の存在を何も書き残していない。



わかりにくいアクセス道路

略図
略図

塚古墳は太秦面影町の住宅街の中にある。しかも、知名度がそれほど高くないとあって、近くに住んでいても、その位置を知らない人が多いようだ。京都市も観光スポットとして宣伝する気がないらしい。最寄りの「帷子(かたびら)ノ辻」駅からのアクセス標識がどこにも掲げていない。今後この古墳を訪れる史跡探訪者のために、「帷子ノ辻」から蛇塚古墳までに略図を右に示しておく。

子ノ辻駅を出ると、三条通りの交差点「帷子ノ辻」の角に果物屋がある。果物屋の脇から大映通り商店街が続いていて、その商店街通りに入ってすぐのところに、「お食事処たつや」という店がある。「たつや」の前の路地を入って、後は略図通りに進めば、徒歩5分ほどで蛇塚の前に出られる。