古都の夜を彩るライトアッププロムナードなら2011

撮影 平成23年7月26日


歴史が浮かび上がる奈良の夜の散歩道を歩く

在、奈良国立博物館では特別展「天竺へ,三蔵法師3万キロの旅」を開催中である(会期7.16 〜 8.28)。メインは藤田美術館の至宝である国宝「玄奘三蔵絵」全12巻の大公開。何しろ12巻の全長が190mを越えるとあって、スペースの関係から一度には展示できない。そこで、苦肉の策ととして前期(7/16〜8/7)は各巻の前半部を、後期(8/9〜8/28)に各巻の後半部を展示している。

特別展のチラシ ライトアッププロムナードのチラシ

奘三蔵は、我が国では「西遊記」の三蔵法師として知られる中国・唐代の高僧である。国禁を犯して天竺(インド)へ求法の旅を続け、多くのの経典を携えて帰国し、その翻訳に従事した。彼が漢訳した「大般若経」をはじめとする仏典はその後の東アジアの仏教に与えた影響は計り知れない。

玄奘三蔵絵」はその玄奘三蔵の生涯を絵画化した絵巻物で、鎌倉時代後期に活躍した宮廷絵師高階隆兼(たかしなたかかね)一門の手によるものど推定されている。軽やかな筆致と軽やかな色彩で巧みに描かれた絵は現在も鮮やかで、中世やまと絵の頂点を示すものとされている。

良では、今月16日から9月25日までの約2ケ月間、夜の7時から10時まで市内の世界遺産や歴史的建造物を美しくライトアップする「ライトアッププロムナードなら2011」が催されている。節電対策が叫ばれているこの時期よくやるよ、と思ったが、「 がんばろう!日本〜奈良・関西から元気を〜」とのメッセージも込められているという。

が落ちても暑苦しい真夏の夜であれば、夕涼みを兼ねた散策でライトアップされた歴史的な建物を見て回るのも悪くない。そう思って、博物館を出た後、日が落ちるのをまった。奈良の夜の散歩にひかれたのにはもう一つ理由があった。最近知人から一眼レフのデジカメを譲り受けたが、まだ夜景の撮影を心見たことがない。一度試してみたかった。

奈良公園内の鷺池に建つ六角形の浮見堂

薄暮の中に浮かび上がる浮見堂
物館を出たのは午後6時。7時からのライトアップにはまだ時間があるので、鷺池の浮見堂に向かった。浮見堂は鷺池に浮かぶ檜皮葺き(ひわだぶき)の六角形の堂である。水面に写る姿が美しく、水辺の憩いの場になっている。。現在の浮見堂は、旧浮見堂が老朽化したために、平成3年から平成6年にかけての3年間の修復工事によって、その美しさを今によみがえらせた。

を取るには水辺がよいと思って来てみたが、浮見堂には観光客の姿も近隣の住人の姿もなかった。岸辺に舫いだ小舟をぼんやり眺めながら、日が落ちるのを待った。そのうち、一組の若い外人のカップルが来たが、携帯パソコンに覗き込んでしきりに何かを相談している。午後7時になって、六角堂にいくつかのライトが点灯した。鷺池の周囲にもいくつかライトが点灯した。だが、チラシにはめ込まれた写真とはイメージとは違う。

かしいなと思いながら、とりあえず鷺池の周囲から浮見堂を眺めてみることにした。たまたま通りかかった仕事帰りの女性とすれ違ったので聞いて見ると、ライトアップは7時半からですよと教えてくれた。夜のとばりがすっかり落ちて、水面に幻想的な浮見堂の姿が浮かび上がった。

今夏再開された仏教美術資料研究センター

仏教美術資料研究センター
良国立博物館の裏に「仏教美術資料研究センター」という建物があるのは、あまり知られていない。明治35年に、当寺奈良県の古社寺修理技師だった関野貞(せきのただし)の設計で完成した建物である。

造漆喰壁の建物で屋根は桟瓦葺き、入母屋造りの中央楼から東西に胴屋(どうや)を延ばし,端に宝形造りの翼楼をおいている。こうした対称性の強い構造は、宇治の平等院鳳凰堂を強く意識して設計されたと言われている。

初は奈良県物産陳列所として開館したが、その後奈良県商工館、奈文研事務庁舎などを経て、現在は仏教を中心とする歴史と美術に関わる学術資料を整備・保管・公開を行う本格的な博物図書館として機能している。一昨年10月から建物の耐震改修工事のため休館していたが、工事が完了し今夏から再開されている。

フレンチ・ルネッサンス風の奈良国立博物館のなら仏像館

ら仏像館は明治27年(1894)に完成した煉瓦造りの建物で、設計は、当時宮内省内匠寮技師であった片山東熊(かたやまとうくま・1854-1917)によるもので、フレンチルネサンス高揚期の様式をとっている。昭和44年 (1969)に「旧帝国奈良博物館本館」として重要文化財の指定を受けている。平成22年7月20日のリニューアルオープン以降、従来の照明方法を一新している。

関まわりの装飾は意匠的に特にすぐれ、明治中期の欧風建築の代表とされている。日が落ちて夕闇の中にライトアップされた姿は、静かにたたずむ古き良き時代を偲ばせる。

奈良のシンボルとも言える東大寺の南大門

も八時を過ぎると、奈良のシンボルとも言える東大寺に訪れる参拝客もほとんど見当たらない。参道脇の土産屋の明かりを落とし、ねぐらに帰るのを忘れた鹿が時折り暗闇の中から姿を表す。東大寺は南大門も中門も大仏殿もライトアップしているが、なにせでかすぎる。建物全体をフレームに納めるには、かなり遠方からシャッターを切らなければならない。すると光不足のせいか、イメージがぼけてしまう。

南大門から大仏殿を写す
大寺は平成10年末に世界遺産に登録された。その中の大仏殿は世界最大の木造建築物である。南大門の敷居に腰を下ろして仁王像をデッサンしている男がいた。彼を画像の一部に取り込んで、中門と大仏殿を写してみたが、結局はボケた映像になってしまった。それが右の写真である。

そらく、こうした構造の写真を撮影するには、単に「夜景モード」を選択するだけでなく、シャッタースピードや絞りなどの細かい設定も必要なのだろう。だが、詳しいことはマニュアルを読んだだけでは分からない。

大門の両脇に置かれた運慶快慶作金剛力士像(仁王像)は迫力があった。わが国最大の木彫像で、像高は8.4メートルである。規模の大きさもさることながら、ライトアップされた姿は昼見るよりも陰影がはっきりして一層迫力を感じさせる。鎌倉時代を代表する仏師の技のすごさが伝わってくる思いだ。しかし、阿吽(あうん)の位置が「儀軌」とは逆となっているそうだ。

金剛力士像(吽形) 金剛力士像(阿形)

春日鳥居の典型とされている春日大社の一の鳥居

日神社の一の鳥居は神社の表玄関で、奈良県庁前から南に延びる国道169号線に面して建っている。836年の造営と伝えられる重要文化財で、夜景に映える朱色が美しい。気比神宮と厳島神社の大鳥居に並ぶ「日本三大鳥居」の一つとされ、木造で高さは6.75m、柱間は5.2mを測る。

の一の鳥居は、昭和36年の第2室戸台風後に再建されたが、近年老朽化が進み、平成20年に解体修理されている。

猿沢池から見た興福寺の五重塔

沢池(さるさわのいけ)は、奈良公園の中にある周囲360mの池だが、水が流入する川がなくまた流出する川もない。それなりに、常に一定の水量を保っている。興福寺五重塔が周囲の柳と一緒に水面に映る風景はとても美しく、奈良八景のひとつとなっている。

沢池のほとりには、釆女神社(うねめじんじゃ)がある。帝の寵愛が衰えたことを嘆き悲しんで入水した釆女を慰めるために建てられたとのことだ。

興福寺の五重塔、平城宮の朱雀門と大極殿、薬師寺

イトアッププロムナードにはこれらの建物も散策のルートに入っている。興福寺の五重塔は撮影したが、しっかりした三脚を用いなかったせいで、画像はすべてぶれてしまい失敗。猿沢池を後にしたときは、時計の針はすでに午後9時を過ぎていた。ライトアップは夜10時まで行われている。しかし、9時を過ぎてから平城宮や薬師寺へ回るにはタクシーでも利用しなければ無理だ。そんな訳で別の機会に訪れることにした。




2011/07/27作成 by pancho_de_ohsei

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