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今まで谷筋に沿ってほぼ一直線に上ってきた道が、ふたたび杉林の中をジグザグに進むようになる。ジグザグといっても半端な傾斜ではない。ほぼ垂直に切り立った山肌を這うようにして登るようなものだ。このあたりが、最期の難関である。
11時45分、ようやく広い道に出た。道路の脇に標識がたっていて、右に進むべきなのだが、左方向に矢印がでていて、「岩屋文殊 すぐそこ」と書いてある。知恵を授かる文殊さんが、50mほど左に行ったところにあるらしい。知将大楠公も信仰されたと伝えられる、と添え書きがしてある。
せっかく近くまで来たのだから、と立ち寄って見ることにした。しめ縄を渡した立石に文殊菩薩像が浮き彫りされていたのだろうが、長い風雪に曝されて今では判然としない。立石の前には、線香代わりに無数の矢が立ててあり、その羽の部分に合格祈願の願い事が書かれていた。
神仏に頼って志望校へ入学できるなら、これほど簡単なことはないと思うのだが、受験生にとっては、すべてが頼みの綱である。そのいじらしい気持ちが白羽の矢にこもっていた。
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