|
奈良市内に住む同期生のJ.H女史からメールを貰った。元旦の午前0時から午前8時まで東大寺の大仏殿が無料で参拝できるうえに、観相窓から大仏を拝顔できるという内容だった。初詣に誘ってくれたのかと喜んだが、当の本人は毎年の恒例で熊本に実家で正月を過ごすという。代わりに近くに住むT.Y氏を誘うと、さっそく電車の特別ダイヤを調べ、落ち合う時間まで指定してくれた。 いつものように一日が終わり、いつものように朝がくる。ただそれだけではないか、と思う。だが、大晦日の夜は一つの締めくくりとして、人それぞれに特別な感慨を抱かせるらしい。終日静かに降り注いでいた雨が、「紅白歌合戦」の放送が始まる頃には止んだ。風がないせいか、雨上がりの夜は意外なほど暖かく感じられる。私鉄各線は今晩、終夜運転の特別ダイヤを組んでいる。大晦日の除夜の鐘にはまだ少し早い時間帯の電車は、ほとんど乗客がいない。八木西口駅でT.Y氏と落ち合い、西大寺経由で奈良へ向かった。 |
春日大社の参拝をあきらめる東大寺の毘慮舎那仏を無料で拝観した後、春日大社へ参拝に向かうのは、このあたりの習慣らしい。東大寺を出た長蛇の列がそのまま春日大社の参道へ続いている。観相窓から大仏の顔を拝むという当初の目的は果たした。どうしょうか?と、T.Y氏に相談すると、折角出て来たのだから参拝して帰ろう、との返事が返ってきた。 東大寺前の交差点から春日大社への参道は、いわばバイパスなのだろう。それほど広くない道を裸電球がところどころを照らしているにすぎない。二の鳥居まで来たとき、またしても足止めをくった。やはり参拝者が殺到して拝殿までたどり着くのは大変らしい。 前方は人の列が延々と続いている。 年若い世代ならともかく、還暦を過ぎた我々には寒空の下でこれから1時間近く並んで待つのは厳しい。結局、参拝をあきらめて、帰路につき途中で年越しそばでも食べて体を温めることにした。橿原のアパートに戻ったのは、午前4時を回っていた。 |
橿原神宮の初詣客の多さに圧倒させられる
橿原で借りているアパートは、近鉄の「畝傍御陵前」駅の駅前に建っている。橿原神宮に近い。橿原森林公苑の中の遊歩道は、毎日の散歩コースに利用している。近鉄沿線では、橿原神宮は伊勢神宮と並んで初詣の参拝客が多い。だが、近くにアパートを借りながら、今までこの神社に初詣で参拝したことがない。奈良から戻って一眠りしたあと、橿原神宮にも参拝することにした。幸い、元旦の空は青く、風もない。初詣のハシゴをするのも悪くない。 橿原神宮の参拝者はマイカーで訪れる者が多い。あちらこちらにある駐車場は満車で、道路の路側帯にも延々と駐車の列が続く。表参道も北参道も香具師の店が並び、参拝者の人混みは、やはり想像を超えるものがあった。
もう一つのサービスは、内拝殿前まで入り込んで参拝できることだ。普通の日には、一般の参詣者は外拝殿から遙か彼方の本殿を拝むだけで、本殿の屋根の千木(ちぎ)の先端をわずかにのぞむにすぐない。だが、初詣のための賽銭箱は、内拝殿の正面に金網を巡らして特別に設置してある。
むしろ、多くの神社の中で最も新しい神社で、創建は明治23年(1890)3月、たかだか100年の社歴を持つにすぎない。しかも、我が国を第二次世界大戦に導いたおぞましき皇国史観に裏打ちされた神社であることも事実である。参拝者たちはそうした背景を理解した上で祭神に願い事を祈っているのであろうか。この神宮は来月にもう一度参拝客で賑わう日がある。2月11日の建国記念日、かっての紀元節に催される建国祭のときである。 アパートに戻ってテレビのスイッチを入れると、臨時ニュースのテロップが画面に流れた。小泉首相が初詣に靖国神社に参拝したというのだ。またか、というのが最初の印象だった。都内での初詣なら、明治神宮でも日枝神社でもどこでもよいであろう。だが、首相は異常なほど靖国神社に固執する。その無神経ぶりに、また中国や韓国から不快の念を表明され、外交問題に発展するのは間違いない。それを承知の上での参拝だがら、一層始末が悪い。後世の歴史家は、外交感覚のない偏執者を一国の首相として戴いた不幸を嘆くことになるかもしれない。 |