節分の日に本堂前の境内で行われる真言密教の秘法
■ 護摩とは、不動明王などの前に壇を築き、火炉を設けて木などを燃やし煩悩を焼却し、併せて息災を祈願する密教の修法である。日本特有の仏教行事で、特に野外で行う大規模な護摩法要のことを大柴燈護摩供(だいさいとう・ごまく)と言う。伝統的な柴燈護摩は、真言宗を開いた空海の孫弟子に当たる聖宝理源大師が初めて行ったと言われている。
■ 真言宗系の寺院が行う「柴燈護摩」は本来は山中修行で、行者だけで修するものである。柴燈護摩に柴の字が当てられているのは、山中修行で正式な密具の荘厳もままならず、柴や薪で檀を築いたことによる。
■ 元興寺では、節分行事の一つとして、本堂に不動明王を遷座して僧侶による供養が行なわれ、続いて本堂前で導師と行者衆による星祭・厄除け・招福祈願の柴燈大護摩供(さいとうおおごまく)と火渡りが修される。縦・横・高さ、数メートルに組んだ薪で護摩を焚き、熾(お)き火の上を素足で火を渡る修行である。
■ 火には「焼く」という働きがあるので、護摩の火で、煩悩や、身に降りかかる諸々の悪い事、いやな事などを焼き尽くすためだ。導師が最初に黒こげの丸太の並びを渡ったのを皮切りに、一般の人も参加し希望者が次々に火を渡って行く。
本堂に不動明王を遷座して僧侶による特別祈願
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| 本堂内陣に遷座された不動明王 |
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| 入場する僧侶たち |
■ 元興寺の節分の行事は、僧侶が行なう不動明王への特別祈願で開始される。そのために、二体の不動明王があらかじめ本堂の内陣に遷座され供物が捧げてある。定刻の正午、法衣をまとった11人の僧侶が内陣に着席し、特別祈願の法要が開始された。何という経を読経しているのか分からないが、彼らの唱和する声が堂内に響き渡り不思議な世界に参拝者をいざなう。法要はおよそ50分続いた。
竹内流古武道の演舞の奉納
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| 本堂の前庭に四方を囲って準備された護摩壇木 |
■ 柴燈大護摩供は元山上千光寺の導師と行者衆によって執り行われる。杉葉で覆われた護摩壇木に火をつけ、炎の中に不動明王を勧進して祈願を行う。願いを書いた護摩木を炎に投入し焼き尽くすことで、我々のけがれ、心の迷いや煩悩を護摩の火(不動明王の智慧の火)で焼き清めてもらおうというものだ。
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| 導師と行者衆のお練り
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同左 |
■ 柴燈大護摩供は、午後1時から本堂前の境内で執り行われる予定になっている。時間になったのだろう、ホラ貝を鳴らしながら導師と行者が東門から境内に入ってきた。彼らに続いて、護摩供養に先だって、日本最古の柔術と云われる竹内流古武道の演舞を奉納する剣士たちも入場してきた。
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| 整列した剣士達
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豆まき会場で行われた鏡開き |
■ 剣技を奉納するため、剣士達が準備をしている最中に、豆まき会場では鏡開きが開かれた。参拝者にふるまう酒樽を年男が木槌で叩き割る行事だが、なぜかセント君まで参加していた。
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| 剣士達が披露する剣術
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同左 |
護摩壇に破魔矢を放って結界を張る所作
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| 破魔矢を放って結界を張る準備 |
■ 剣技の奉納が終わると、いよいよ元山上千光寺修験者によって柴燈大護摩供が執り行われる。最初に四方と護摩壇に破魔矢を放って結界を張る所作を行ない、二本が結界の外に放たれる。この矢は縁起物として拾った者には喜ばれるという。
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| 天に向かって矢を射る行者
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同左 |
■ 護摩壇に破魔矢を放った後、刀を振って光の文字を描き魔を払う所作をおこなう。
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| 護摩壇に破魔矢を射る行者
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刀を振って光の文字を描き魔を払う所作 |
護摩壇木に火がつけられ護摩供養の開始
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| 節分願文の読み上げ |
■ 引き続いて、生の杉葉に覆われた護摩壇木に火がつけられ護摩供養が執り行われるのだが、それに先だって住職が節分願文を読み上げた。その後、二本の竹の先に着火され、護摩壇木に差し込んで護摩壇に火をつけられた。生の杉の枝はすぐには燃え上がらない。
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| 松明への着火
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護摩壇の点火 |
■ やがて、もの凄い煙が護摩壇から立ち上がり、風に煽られて周囲を煙の中に巻き込んだ。煙の柱は壮観そのものである。
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| 猛烈な勢い煙が立ち上がり、風に煽られて周囲を巻き込む |
■ 護摩壇から吹き上げていた煙の間から、ようやく炎の色が見えた。護摩壇を覆っていた杉の枝が燃え尽き、その下から燃えさかる護摩壇木が姿を現した。修験者風の行者は信者の願いを書いた護摩木を炎の中に投げ入れる。こうして願いの書かれた護摩木を焼き尽くすことで煩悩を焼却し、あわせて息災を祈願するという。
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| 壮観な煙の饗宴
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同左 |
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| 杉葉の下から燃えさかる護摩壇が現れる
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護摩木を護摩壇に投げ込む行者 |
護摩壇を崩して火渡り
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| 護摩壇を組んでいた丸太を切り崩す
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火渡りのために護摩壇木を組む |
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| 火渡り前の祈願 |
■ 護摩木が燃え尽きると、護摩壇を崩して火渡りの準備が行われる。 護摩壇を組んでいた黒こげの丸太を切り崩して、護摩のおき火(炭火)の上に並べる。そして、先ず導師が火渡りをし、続いて火渡りの希望者が素足で次々と渡る。護摩供養ではこれが火伏せと言う行法である。
■ 火渡りは危険な行である。時折りおき火が黒こげの丸太の間から赤い炎を見せている。志望者はそれほど多くないだろうと思っていた。ところが、希望者の列が陸続と続き、最後の一人が渡り終えるまでに30分近く要した。
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| 塩で足の裏を浄め、導師の指示に従って焼け残った丸太の上を歩く |
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| 同上 |
最後に豆まき
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| 豆まきの会場 |
■ 本日の最後の催しである豆まきは、予定の午後3時を少し過ぎて行われた。壇上に並んだ福男・福女からかけ声とともに豆袋がまかれた。豆まきは、鬼を追う神事から始まったとされ、一般には「福は内」の掛け声に「鬼は外」が対句として使われている。だが、元興寺の豆まきのかけ声は変わっていて、「福は内、鬼も内」である。元興寺には元興神(がごぜ)という鬼がいて、悪者を退治すると言い伝えがある。そのため、「福は内、鬼も内」と言うそうだ。
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| 壇上に並んだ福男・福女
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歓声を上げて豆袋を受け取る参加者 |
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