橿原日記 平成19年10月24日

一般向け岩湧山モデルコースを歩く

岩湧山の山頂から見た大阪平野
岩湧山の山頂から見下ろした大阪平野。遙か彼方にPLの塔が見える。 (撮影 2007/10/24)


南海電鉄「河内長野」駅前の広場
南海電鉄「河内長野」駅前の広場
バスの車窓から見た滝畑ダムの上流
バスの車窓から見た滝畑ダムの上流
イヤモンドトレール、略して”ダイトレ”は、近隣では知られたハイキングコースだ。北は奈良県香芝町の屯鶴峰(どんずるぼう)から南は和泉市の槇尾山(まきおさん)まで、金剛葛城山系を文字通り縦走する全長45キロの長距離ルートである。

5キロの山道は、余程の健脚でもなければ一日で踏破できる距離ではない。筆者は2年前、金剛山から北のルートを3回に分けて歩いた。金剛山から南のルートは、紀見峠(きみとうげ)から岩湧山(いわわきさん)を経て槇尾山まで続くが、まだ歩いたことがない。

阪府の河内長野市にある「滝畑ダム」を起点として、南海電車の「紀見峠」駅までの約11.5キロのハイキングルート(所要時間3時間50分)が、一般向けのモデルコースとして設定されているそうだ。そのほとんどはダイトレと重なるという。

湧山は大阪府の南部を東西に延びる和泉山脈の主峰である。山頂北部はススキの群生地として知られている。ここ数日は、ススキの名所を追って山歩きが続いている。今月18日には葛城高原を訪れた。昨日の23日は曽爾高原を訪れた。知人からは、岩湧山のススキも見事だと聞いていた。事のついでに、本日は思い切って岩湧山に登ってみることにした。幸い秋晴れの良い天気が続いていた。



岩湧山登山口から岩湧山の山頂まで 「滝畑ダム」バス停−(4km)−岩湧山頂

「清滝ダム」バス停
「清滝ダム」バス停
海電鉄の河内長野駅前を9時04分に出る日野・滝畑コミュニティバス「滝畑ダム行き」に乗車した。市街地を抜けたバスは、次第に山間に入り、石川の上流に建設された滝畑ダムの左岸に出た。ダムの中程にかかる夕月橋を渡ってダムの右岸を進むと、やがて終点の「清滝ダム」バス停に着く。時計を見ると、9時35分を示していた。停留所の端で、コスモスが朝の陽光を受けて咲き誇っていた。


岩湧山登山口
「四季彩館」横の岩湧山登山口
ス停から車道脇の歩道を石川の上流に向かって少し進むと、道路脇に売店・駐車場があり、その横に「四季彩館」が建っている。ここでは自然解説員がハイキングコースの案内や動植物の説明をしてくれるそうだ。だが、朝が早いせいか解説員の姿は見あたらない。「四季彩館」の脇に「岩湧山登山口」と書かれた看板が立っていた。そこからすぐに細い山道が山腹に築かれている。

山口から登攀を開始したハイカーを確認すると、4人組の男性パーティ、3人組の女性パーティ、友達同士で来た女性2人連れ、一組の老夫婦、それに筆者の合計11人である。いずれも年配でバスの同乗者だった。9時45分、彼らの最後について登ることにした。


登り始めの最初から急坂が続く
登り始めの最初から急坂が続く
いたことに、歩き始めてすぐにつづら折りの急坂が続いた。途中で何回も足を止めて呼吸を整えなければ苦しくなる。坂の途中で、老夫婦は休息を取っていて、追い越して先へ行ってください、と道を譲った。

の後も木段の上りが続き、15分も歩いていないのに、噴き出した汗で下着がビッショリ濡れてきた。


カキザコ付近から出発点方面を振り返る
カキザコ付近から出発点方面を振り返る
0時35分、植林の中を南に上ってきた坂道が急に東側に折れて、山の中腹に出た。この当たりを「カキザコ」と呼ぶらしい。急に視界が開けて、谷向こうの山やはるか後方の民家の屋根が見えた。

キザコから先は、しばらく見通しが効くなだらかな坂道が続く。


ハイキングルー
ヒノキの植林の中を抜けていくハイキングルート
0時45分、登山を開始して1時間が過ぎた。急な木段の坂道を上りきると、山の稜線に出た。道は比較的平坦になり、秋の日が梢越しに落ちてきて枯れ葉の上に縞模様を描いている。この日初めて反対側から下りてくるハイカーの青年とすれちがった。

び植林の中の木段があり、それを上りきると植林が切れて灌木の中に紅葉を始めた木々があった。


送電線の下に生えているススキ
送電線の下に生えているススキ
1時05分、送電線の下にススキが生えている原っぱに出た。このあたりからススキの原が始まるのかな、と思ったが、送電線の鉄塔の下を抜けると、再び植林地帯に入った。どうやら、送電線の真下は杉や檜を植林しないで原っぱのまま放置されてきたため、ススキが勝手に自生しているようだ。山焼きなどして、人の手が入っているようにはみえない。


植林の向こうに見えてきたススキの原
植林の向こうに見えてきたススキが原
1時20分、植林の中の緩やかな道を下っていくと、前面にススキが一面に広がっているのが見えてきた。

内板の説明によれば、岩湧山頂一帯は別名”キトラ”と呼ばれる滝畑住民の区有地で、日本を代表するカヤ(茅、萱)の宝庫だそうだ。カヤは一般に屋根葺きや炭俵、スダレなどに使われるイネ科の多年草(ススキの一種)で、オンガヤとメンガヤに大別される。

一面に広がるススキ(カヤ)の原
一面に広がるススキ(カヤ)が原
ンガヤは平地に分布し、太く固いが、メンガヤは主に山地に分布し細かく柔軟性に富んでいる。そのため、メンガヤは屋根葺きに適しているとされてきた。キトラのカヤは、良質のメンガヤで、文化財建築物の屋根葺きに最適と認められている。

のため、岩湧山茅山保全協議会では、このカヤを文化庁に提供すべく、カヤ場の保全およびカヤの品質向上に努めているとのことだ。我々は単にススキが原と呼んでいるが、正確な言い方をすれば「カヤ場」と呼ぶべきかもしれない。

aaaa


岩湧山の山頂広場
岩湧山の山頂広場
1時45分、岩湧山の山頂に到着。登山を開始してからちょうど2時間をかけてここまでたどり着いたことになる。モデルコースに示された所要時間は105分だから、すこし時間がかかったようだ。

頂広場の片隅にパノラマ案内と山頂を示す標高897.7mの標識が立っている。広場の中央には東西南北方向に眺めることができる主要な山や市街地を示した四角の表示が置かれていた。周囲のススキが伸びて眺望があまり効かないが、ベンチの上に立って眺める景観はさすがだ。

ンチや周囲の草むらでは、かなり多くのハイカーたちが昼食を取り始めていた。滝畑方面から登山してきたハイカーは11人だったから、我々より早く上ってきたか、あるいは反対方向の金剛山からダイトレを歩いてきたハイカーたちなのだろう。平日にしては多い数だ、とダイトレの常連とおぼしき男が友人に話していた。

aaaa



岩湧山頂上から紀見峠駅まで 岩湧山頂上−(2km)−五ツ辻−(3km)−越ケ滝分岐−2.5km)−紀見峠駅

岩湧山の標識
岩湧山の標識
頂の広場で、コンビニで買ってきた弁当を食べ、汗に濡れた下着を取り替え、ベンチの上で横になって少し仮眠をとった。標高900m近い山頂にしては、ススキが原を渡ってくる秋風がさわやかで肌に心地よい。

2時25分、山頂広場を後にして、ダイトレを紀見峠方面に向かって歩き出した。相変わらずススキが原が続く。しかも、下り坂ではなく上り坂である。実際の山頂は、広場からすこし上った所にあった。そこを過ぎると、ススキが原の中を道が下っていく。


下り道の前方に姿を現した金剛・葛城
下り道の前方に姿を現した金剛・葛城
スキが原の中を通る下り坂の先に、金剛・葛城の山塊が姿を現した。ダイトレは紀見峠を越えてあの山系に連なっている。これらの山並みを遠望するにつけても、その尾根伝いに延々とハイキングコースが築かれているとは、ちょっと想像しにくい。でも、多くのハイカー達が汗を流しながら、毎日のようにその尾根を踏破しているのだ。




ススキが原のはずれにあるトイレ
ススキが原のはずれにあるトイレ
2時35分、ススキが原を下りきると、公衆トイレがあった。その先は、また植林地帯である。木々の間を一直線に築かれた木段が先に延びている。

差をつけるために横木を渡しただけの木段は、坂道にとっては不可欠な施設だが、結構歩きづらい。その証拠に木道の横をハイカー達が歩いて、いつの間にか地道の歩道ができあがっている。


岩湧寺方面への分岐
岩湧寺方面への分岐
2時40分、木段を上りきったところに標識が立っていた。岩湧寺方面への分岐点である。岩湧寺は役小角(えんのおづぬ)が開いた古刹で、岩湧山の中腹に建っている。多宝塔と本尊の大日如来座像が国の重要文化財に指定されている。

湧寺への正式のルートはもう少し先の「いわわきの道」である。現在の標識のところからも分岐して行けるが、どうもショートカットの急坂の道らしい。

湧寺は、時間が許すなら立ち寄って見たい寺だ。だが、ダイトレから分岐して2キロの下り道を歩かなければならない。下るだけで40分を要するとのことだ。同じ道を上って戻ってくるとすれば、さらにその倍の時間は覚悟しなければならない。時間を計算して今回はあきらめることにした。


長い木段の下り坂
振り返って見た長い木段の下り坂
2時45分、植林の中の長く急な下り坂にかかる。ダイトレは尾根づたいに築かれた山道である。上りの坂道があれば、それと対をなず下りの坂道必ずある。

道の途中で後ろを振り返ると、天に続く階段のように木段が延びている。逆方向から上ってきたら、おそらく10m上るごとに小休止を取らないと上りきれない気がした。そう思いながら、下りていくと逆方向から一人の老婦人がゆっくりと木段を上ってきた。

ち止まって話をすると、週末に孫達を連れてハイキングを予定しているので、その下見をかねて上ってきた、という。 「どちらから、上ってこられましたか」との問いに、「紀見峠駅」からとの返事が返ってきた。 「ああ、それは大変でしたね。お気をつけて」と通り一遍の返事をして別れたが、このときは、紀見峠駅からの登攀がどれほど厳しいものかは、この時点で何も知らなかった。


いわわきの道の分岐点
いわわきの道の分岐点
2時57分、ふたたび岩湧寺方面への分岐点に来た。こちらのルートが岩湧寺への正式のルートで「いわわきの道」と呼ばれているようだ。

湧山の頂上を出発してから、ほぼ30分が経過していたので、分岐点の傍のベンチで一息入れた。頂上の広場では30人ほどのハイカーを見かけ、ほとんどは金剛山の方からダイトレを歩いてきたものと思った。だが、岩湧山をここまで下ってきて出会ったのは先ほどの老婦人だけである。前にも後ろにも絶えて人影がない山道を一人歩くのは、一種の気味悪さを感じる。


五ツ辻
五ツ辻
3時4分、いわわきの道分岐点から7分ほど歩いたところに「五ツ辻」の看板が立っていた。この付近の標高は754m。ダイトレの標識では、岩湧山から3km、紀見峠から4kmの地点にあたるようだ。

ツ辻と言うからには、山道の五差路の交差点にあたる訳だが、ダイトレ以外はどの道がどこへ続いているのかさっぱり分からない。


南葛城山方面への分岐点
南葛城山方面への分岐点
ツ辻からのダイトレは南へ向かう尾根の山陰を行く。なだらかな道だが日陰で湿っぽく、両側から延びてきた笹が道幅を狭くしている。

3時20分、南葛城山方面への標識の所に出た。そのすぐ近くからダイトレはアスファルト舗装された下り坂に変わる。5分も歩くと、アスファルト舗装は切れる。その代わり、道幅が広くなり、車の轍が続いている。森林保安のため、不要な木々を切り倒して運び出す運搬車がこのあたりまで上ってくるのだろう。


ああああ
根古峰の標識
3時40分、ダイトレの横に「根古峠」の標識が立っていた。標高は749.6mである。すでに1時間半近く岩湧山を下ってきたが、標高差でみればまだ897.7−746.6=151.1mを下ったにすぎない。

ールの紀見峠駅付近を流れる川は根古川である。マス釣り場があることで知られる川だが、その源流はどうやらこの付近から流れ出る渓流のようだ。


岩湧山三合目(標高650m)
岩湧山三合目(標高650m)
3時51分、ようやく「岩湧山三合目」の標識がある地点に到達した。標識には、小さい字で「岩湧山頂まで4.5K」と彫られている。つまり、1時間半をかけて4.5キロの道のりを歩いてきたことになる。

こでハイキングコースはダイトレと別れることになる。ダイトレはここから紀見峠を越えて金剛山へ向かうが、岩湧山モデルコースは、ここから一気に山を下って南海りんかんサンラインの紀見峠駅へ向かう。


紀見峠駅に下る悪路
紀見峠駅に下る悪路
コンクリート舗装の下り坂
コンクリート舗装の下り坂
後14時、岩湧山三合目から紀見峠駅に向かう下り坂の途中にいた。どうやらこの下り坂が岩湧山モデルコースの最大の難関のようだ。まず、山の斜面を駆け下りるように道はほぼ一直線に杉林の中に築かれている。山の傾斜角度がそのまま坂道の角度となるから、登山者にとっては上るのも下るのも大変な場所だ。

れに加えて、お世辞にも整備された道とは言えない。大小の石や岩が道路面に散乱し、木段は壊れたり道路に埋まってしまったりしている。途中、数回砂利に足を取られて転びそうになった。

湧山モデルコースのゴールは紀見峠駅だが、もちろん逆方向に紀見峠駅を出発点として上ってくることも可能だ。だが標高650m地点までほぼ直線で上る坂道など、小生にはとてもできない。

15分ほどかかって急な坂道を下り、やっと少し平坦な坂道にかかったと思ったが、その先がまた厳しかった。コンクリートで舗装された急坂が、滑り止めにほの20cm間隔で溝が切ってある。この歩きにくい急坂も長々と続いた。


根古川の渓流
根古川の渓流
4時37分、やっと越ケ岳キャンプ場との分岐点まで下りてきた。実に30分以上を要した急坂の踏破だった。分岐点からは、根古川の渓流のせせらぎを聞きながらのなだらかな下り坂が続く。それでも越ケ岳分岐点から紀見峠駅までは2.5km、約30分を要する道のりである。




南海りんかんサンラインの新紀見トンネル入口
南海りんかんサンラインの新紀見トンネル入口
4時40分、南海りんかんサンラインの新紀見トンネルの入口の上に出た。ここまで下りてきて、やっと前方に民家が確認でき人間の世界に戻ってきた安心感を感じた。駅まではまだ10分程度歩かなければならないが、急坂を下りてきた両足はそろそろ痙攣を起こしそうなほど疲れている。それでも、何とか11.5kmの山道を歩ききったという満足感が残った。



2007/10/25作成by pancho_de_ohsei return